VOCALISE 13


十三
 
 
「・・・・なんか」

「うん?」

「私は、すごいことを沢山口走りましたか?なんかいっぱいすごい事をしました」

 とキョーコは真っ赤な顔で蓮に言った。

 蓮はくすくす笑う。

「・・・とても可愛かったよ。でも、やばい。頭がどろどろになる。頭の奥が痺れる。可愛くて・・・本当に溺れそう」

「・・・本当ですか・・・?」

「・・・喜んでる?」

「・・・変ですか・・・?」

「いや?オレが見境無く君を抱いたら、君は大変そうだなって思って。君がよろこぶならオレは何でもしそう」

「・・・またしたくなったら呼んでください・・・」

「・・・・明日も、明後日も、毎日来て」

「えええっ・・・」

「オレがいなくて耐えられなくするのもいいね」

「・・・ふふっ大丈夫です・・・恋すると何でも許してしまうし全部好きになってしまう・・・。頭にもやがかかって弱くなってしまうから恋なんてしないって思ったのに・・・。・・・でも、人形でいる間、本当に、声が使えないジレンマでいっぱいになってしまって・・・声が使えるなら、言いたい、体が動くなら、全てをしたいと思って・・・・」

「そんなにしたかったの?」

「そういう訳じゃないんです・・・・好きって・・・そばにいてって・・・ずっと・・・言いたかったんですっ」

 キョーコが頬を膨らませて言った。

 でも、キョーコは、どうして恋愛に肉体だけの恋愛もあるのか、少しだけ理解できた気がした。ただただ、肌に触れたい時がある。人形ではありとあらゆる希望、触れられないジレンマで押しつぶされそうな気持ちだった。

「・・・・オレも好きだよ。本当にずっと・・・好きだった・・・」

蓮はキョーコに改めて言う。

「・・・・もう敦賀さんは優しいから・・・」

キョーコはまだ信じずに、笑う。
 
 
――オレの本当も、本当の気持ちも、本当の姿も、声も、全て知って欲しい・・・見て欲しい・・・・
 
 
 キョーコは、蓮の腕の中で、ずっとずっと蓮の髪に触れ、何度も何度も、飽きる事無く、愛おしそうに後頭部を撫でていた。

あまりに愛しそうに見つめて触るから、とても心地よくて、その様子を蓮は黙って見つめていた。

金色のやわらかな髪、コーンのように綺麗なグリーンの瞳・・・キョーコは蓮の頬に手を寄せる。

この瞳はどうやって作っているのだろうとキョーコは不思議に見つめる。

キョーコは親指でゆっくりと、蓮の目じりを指でなぞる。

とてもとても愛しそうにキョーコが蓮の瞳を見つめる。

「・・・今日の西洋人形の敦賀さんは私の記憶の中に眠る人に、本当によく似ています・・・。・・・私の妖精・・・。このまま敦賀さんをお人形にして、ずっと見ていたい・・・。私も・・・人形ではいたくなかったのに・・・でもこのまま・・・永遠に敦賀さんのお人形でいられたら、ずっと一緒にいられていいのにって・・・いうのも思いながら、ピアノの上で触られていました・・・」

「・・・なんだか・・・とてもすごいセリフだけど・・・」

「・・・ふふ・・・それくらい好きって事です・・・」

「・・・・そういうのが好きなら、それはそれで今から叶えようか?オレの人形になる?いいよ、もう一回、する?」

「・・・もうっ・・・結構ですっ・・・ただの比喩ですっ・・・」

 キョーコが真っ赤になって照れるのを、蓮は心から可笑しそうに笑う。

「・・・でも、もし君がここに置いてあって・・・オレが他の女の子をここへ入れて抱いたら・・・本当に映画通りになりそうだね・・・」

 蓮はくすくす笑う。

キョーコが、ぷくぅ、と、頬を膨らませた。

「どんな女の子も、本当に恋したらみんな同じですっ」

 蓮も笑いながらキョーコの目じりを撫でる。
 首筋を、撫でる。
 キョーコが首をすくめて笑う。
 なんて可愛い。

やっと、キョーコの本当の笑顔を見た気がした。

だから、蓮も心から笑った。

それを見て、キョーコが好きと言って蓮の体に腕を伸ばして抱きつく。

頬を胸に寄せる。

蓮がキョーコの髪をすく。

互いに笑いながら肌を探りあう。

「ふふ・・・くすぐったいっ・・・です・・・。でも・・・あの・・・もしかして・・・敦賀さんの魔法で・・・敦賀さん私の記憶の中を見て、今日こうして変装してきて下さったのですか・・・?」

「・・・いいや?そんな魔法なんて知らない。ただ、君に合わせてオレも人形に変装しただけ・・・・。でも・・・君の記憶の中で・・・この髪、この目・・・この体・・・いつかどこかで会って、見なかった?」


 キョーコと蓮は、改めて記憶を共有しあう。

 蓮は言った。

「オレが君を好きなの、少しは納得してもらえたのかな」

キョーコは泣いて答えた。

「信じなくてごめんなさい、本当に本当に敦賀さんが大好きだったから、ずっと、ずっとそばにいたかっただけなの」


今度は互いに心の底から甘えて、何度もキスをねだり合い、心と体の底から、もう一度、深く愛し合った。



2014.12月作成
2019.1.30掲載

*本の中の脱字部分を加えています。
脱字して本当にすみません・・・