信じるくらいいいだろう



「一緒に綺麗な桃色の夕焼けを見たらね、その男女はしあわせになれるんだって」

蓮がそう言うと、キョーコは軽く笑った。

「そんな事を素直に信じられる人は、もう既にしあわせなんですよ~」

キョーコの優しい笑い声と、そっけない返答。

――どういう意味で言ったのか、分かってる?

――ねぇ、心は、少しぐらい、オレに動かない?

二人は、黙って、夕陽が沈むまで、その深くなっていく色を見ていた。

だから二人とも、少しだけ、しあわせに、なった。


*****




上を見上げると、綺麗な桃色の空。

とある言葉が思い浮かんだ。

「モー子さん、桃色の夕陽を一緒に見たら、幸せになれるんだって。」

「ふーん・・・。」

冷めた奏江の声に、キョーコは少しだけ寂しかった。自分は、「しあわせになれる」空色を、「奏江と一緒に」見られた事を、ただ単に喜んだ。

だから、そんな言葉を自分に教えた蓮の気持ちを、少しだけ思った。

『どんな気持ちで、私にその言葉を言ったんですか・・・?』 

もし、私と同じ気持ちなら。

単に、相手と一緒に、しあわせを、分かち合いたいという気持ち、なら。

『何かを、勝手に信じてしまって、いいんでしょうか・・・・?』



2008.04.04