レモンジンジャーエール、ライム添え

レモンジンジャーエール、ライム添え
(act.283を読み終えて&Happy Birthday their GOD)



出されたグラスには、緑色のみずみずしいライムが半月状になって浮かんでいる。「これは・・・」とキョーコが言い、蓮は「作ってみたんだ。手作りのジンジャーエールだよ。それはライム」と言った。氷と炭酸の下で、シロップはピンク色に澄んだ色をしている。

「不思議そうな顔をしているね。大丈夫、レシピ通り作ったし、味見もしたよ?ショウガとはちみつと砂糖とレモンで作ったから変なものは入っていない。まずくは無かったと思う。できるだけ辛くないようにしてみたつもりだよ。よかったら飲んでみて?」

少し口を付けてみたキョーコは、ぱっと目を輝かせて、「おいしい!」と言った。

「それはよかった」

にっこり、と、蓮は笑った。

「でもどうして急に・・・何か、お料理や飲み物を作るお仕事でも、それとも今はお料理にハマっていらっしゃるとか・・・?」

「いや、一緒に乾杯をしようと思って。買ってきてもいいけど市販の物は甘いから、体に気をつかうには良いのかなと思って。ジンジャーは体にいいんだろう?」

蓮は自分の分を口にした。

「でもまだすこし甘いかな?オレはこれにリキュールでも混ぜればいいかも。ジンにジンジャーエールを足したらジンバックだったかな?でも最上さんはそうはいかない。早く飲める日が来るといいね」

キョーコは黙って頷きながら、なんとなく視線を避けるためにまたジンジャーエールを口にした。手作りのジンジャーエールは、ショウガの、少しピリリとした刺激を感じた。

「市販のジュースではこんなにピリピリしませんね、本当はこんな味なんですね」

「本当かどうかはオレにはわからないけど、レモン農家のレシピではそう書いてあったよ」

蓮はおもしろそうに笑う。

蓮の部屋、誰もいない空間に二人でいると、キョーコにはもはや刺激的すぎて早く退散したいような気がする。

「あの。どうして乾杯など・・・?」

「もちろん、お祝い。オレたち二人のこれからと、オレたちを創る人の誕生日に」

「創る人?神様ですね?」

「うん、6月半ばが誕生日なんだって社長から聞いた」

「神様の誕生日!そうですか。ではお祝いしないといけませんね!」

キョーコはニコニコ笑って嬉しそうに蓮を見た。

キョーコは来てからずっと所在なげにしていたのに、急に全開の笑顔を向けられて蓮も表情が緩む。

「ねえ、神にどこかで見られていると思うとどう思う?」

「へ?」

たとえば、と言いながら、蓮はキョーコの傍に寄った。固まるキョーコの様子に、ふ、と、笑いながら、指で首筋に触れて、首にかかったものをとりだし、キョーコの体温で温まったそこに口づけた。

「こういうのとか。全部見られていると思うと、なんかね」

「・・・/////。・・・神様は全部知っているんです」

キスでもされそう。これ以上近づいたら腕の中に入ってしまいそう。

そうなったらもう自分が自分ではなくなってしまうかも・・・・。

想像だけで刺激的で、キョーコは首を振った。

「どうしたの?」

「いえ・・・」

甘いのに、ピリリと辛いジンジャーエールはまるで蓮との恋愛のようで、ここにお酒が入ったら、すぐにまわって酔ってしまいそうな気がする。それもあっという間に・・・。

蓮に酔ってしまったら、きっとクセになってしまいそう。

アルコール中毒ならぬ、恋愛中毒になってしまったら、困ってしまいそう。

「お酒が無くても十分おいしいです。きっと神様も美味しいと言って一緒に飲んでくださいます!」

「ありがとう。また作るね?今度は何がいいかな?作ったら飲みに来てね?」

「・・・私も何か作ります。何がいいですか?」

「じゃあ、今度一緒に作ろう?」

「・・・はい」

はい、と言うのに、少し時間がかかる。また来る理由ができてしまった。一緒に台所に立つ理由ができてしまった。一緒に食べて、一緒に飲む。食べるという人として当然のことにさえ、なんだか、困ってしまう。

「そんなに、緊張しなくても。何もしないよ?(まだもう少しの間はね)」

「いえ、あの、そういう訳では・・・(しどろもどろ)」

蓮は横のキョーコの髪に触れて、そこに口づけた。

まるで髪に神経でも通っているかのようにビクリと反応して、キョーコは顔を伏せる。

「何もしていないよ?」

「・・・これは何もしていないというのでしょうか?」

「うん。もっとしていいならもっと、」

「いえ、けっこうです!」

キョーコは顔をブンブン振って断る。

蓮が面白そうに笑う。

「敦賀さんも、ジンか、何かお酒、足して飲んでください」

「オレはあとで最上さんを送っていくからお酒は飲めないよ」

「すみません、ありがとう、ございます」

「ね、乾杯しよう?」

蓮はグラスを持って、キョーコのグラスに音を立ててグラスを重ねた。

「オレたちを創る人に、それから、オレたち二人に」

蓮はそれを一気に飲んだ。

キョーコは少しずつ口にした。

「ずっと、一緒にいられるといいね」

蓮の問いかけに、キョーコは照れながら、深くうなづいた。





2020.6.21

小ネタです。
お祝いに17日に上げるつもりでしたがその次の283を待っておりました♬
本誌を読むと彼らのなんとも言えない距離感が最高すぎます。
レモンでジンジャーで、ライムの香りもする、どこまでも爽やかでちょっと刺激的な味。
爽やかなジンジャーエール風味!と思ってこうなりました。
いいないいな!おめでとうおめでとう!!
蓮&キョーコさんおめでとう&せんせいお誕生日おめでとうございます♡