「ふ・・・・はっ・・・」
彼女の中を彷徨ったまま、唇をやんわりと弄ぶ。
「こら・・・」
彼女がオレの前髪に指を入れてわしゃわしゃ、掻きまぜる。
恥ずかしさから来る感情をごまかすように、オレに対抗する彼女なりの毎回の妨害。
今日は前髪にしたらしい。
「れん前髪下ろしてたほうがいい」
「そう?」
「私の前だけは下ろしててね」
笑ったオレの唇を引き寄せて、ちゅ、と音を立てて吸った彼女は、「何もいらないから来年の今頃もこうして二人でいたい」と言って、ちいさく笑った。
「もう、満足した?」
「んっ・・・は・・・っ・・・・ぁあ・・・」
のんびりと会話していた彼女を、もう一度高みに上らせる為に奥をつきあげる。
彼女の高い声とオレを強く求める表情。
腕の中には、こんなにも愛しい気持ちと共に、幸せな温もりがある。
「キョーコちゃん」
「れん、れんっ」
互いに名前を呼ぶだけで、きつく熱を伝え合っていく。
高みに上る体温と感情。
――何も、いらない。
反らした彼女の細い首元に口付けて、一つ跡を残した。
「無理させた?」
「へーき」
腕の中で半分寝ぼけている彼女の額にそっと口付けると、ふわり、と優しく微笑んで、さらに目を細めた。
この腕の中の愛しさが消えてしまわないように。毎日ねがう。
来年もそのつぎも・・・。
「ホワイトデー何かほしいもの、ない?」
「ん~」
彼女は、ぼやぼやとオレの腕の中で首をかしげた。
しばらく考えていたようだったのに・・・すぅ、と気持ち良さそうに眠ってしまった。
「おやおや・・・。」
「欲しいものないの?」と、夢の中にいる彼女の耳元でそっと呟いたら、首をすくめて「れん」と一言つぶやいた。
――くすぐったい、の意味だろうけど・・・・。
「くすくす・・・勝手な解釈するよ・・・・?」
彼女の額にもう一度口付け、眠りたての高い体温を感じたくて引き寄せた。
――何もいらないから、来年も腕の中にいて・・・・
明日の朝「オレをあげる」と言ったら、君は何と言うだろうか?
2006.3.14
2020.07.17 改稿