Ultra Soul

*小ねた・ローリィ視点・0蓮キョ・パラレルです。




・・・・・・。



――この子は随分とまた・・・綺麗な面持ちをした男だな・・・・。コレは就職面接であって・・・芸能人スカウト面接ではないんだが・・・。


彼の初めての印象はこうである。細身のリクルートスーツをそつなく着こなし、飄々と、そして彼の回りだけそよ風が吹いているかのように、涼やかに席に座っていた。


グループ面接なんぞ私の出る幕はない・・・・と思いながら見ていた履歴書の一枚。


「社 倖一(やしろ ゆきひと) 21歳 ○○大学○○学部199x年3月卒業見込み 趣味:囲碁・将棋 得意:望めば近くの人間が凍る 不得意:機械全般 」


――得意が・・・人間が凍る?不得意が機械全般・・・。面白いじゃねぇか。


普通そんな事を履歴書に書くだろうか?普通自分を売り込もう、よく見せようとするのが履歴書だろう。機械全般苦手というのは、パソコン主流な今の世の中、どこにも就職など出来んぞ・・・・。


「社君、聞いてもいいかな。何かな、この不得意「機械全般」と言うのは。」
「は、ハイッ。素手で機械を触るとすぐに壊れてしまうという意味での不得意です。素手で無ければ大丈夫です。」
「なるほど?それで・・・同じ対人営業でも・・・デスクワークではなく、あまり機械を触らないで済む現場マネージャーに付きたいのかな?」
「はい。それも、あります。」


彼はあまり自分をよく見せようとするタイプの人間ではないようだ。
割と正直者なのだろう。


「ふむ・・・それから、何だね?この「人を凍らす事が出来る」というのは・・・。」
「邪魔して欲しくない時などは、その周りの人が固まってくれます。今、私以外の皆さんは凍っているかと思いますが・・・・・・。」
「はははっ!なるほどスゴイ特技だな。だから他の皆、話せないのか!じゃあ、他の誰でもいい、誰か何か声を出してくれないか。」

「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」



――おいおい・・・すごい特技だな・・・・。
――だからコレは・・・芸能人のスカウトではないんだった・・・・。
――惜しいな・・・・。


完全に他の学生は凍っていると言うよりは、表情が固まっていた。
話したくても話せない、何か金縛りにでもあっている様な感じだった。


「社君。じゃあ聞こう。健康は?」
「問題ありません。」
「体力と、住む場所は?早朝昼夜問わない仕事だぞ。耐えられるか?」
「問題ありません。」
「分かった。」


最終面接までのぼって来たときには、すでに「男に付きたいか、女に付きたいか」そんな細かい内容まで決まっていた。




それから数年後。



「君には、歳の近い『敦賀蓮』という俳優について貰おう。少し名前ぐらいは知っているかな・・・今ちょうど新しいマネージャーを探していたところなんだ。最近仕事が忙しくなってね・・・。体力のある人間について貰いたいのと・・・君のその『特技』を生かして貰いたい。アイツは仕事に遅れる事が芸能人の中でも特に嫌いなヤツでね。少々神経質かもしれないが、君より年下、弟とでも思って世話してやってくれ。」

「はいっ、宜しくお願いいたします。」
「こちらこそ。期待しているよ。」
「ありがとうございます!」


眼鏡越しに、にこり、と綺麗に笑った社君は、それ以来完璧にマネージングをこなしている。

蓮が一度も仕事に遅れた事が無いのは、マネージング技術と、彼の『特技』もあるだろう。彼のような人間がもっといたら、オレはどんどん採用するんだけどな・・・・。


世の中もっといないものだろうか、面白い人間が。
面白い人間、すごい特技を持つヤツ、全部オレのとこへ来い!




『LME芸能プロダクション 2008年度 新年度卒業生募集要項 

職種各種

「面白い人間求む」 社長より 』









2007.05.27

パラレルです。実際はどうか分かりません(笑)。






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