ふっと・・・・彼女の香りがして、目を覚ました。
ソファでうたたねをしたオレの横で、上掛けを共にかけてその身を小さく寄せていた彼女を背中から抱きしめて、引き寄せた。
「キョーコちゃん・・・・」
「蓮?」
「・・・・眠い。」
「向こう行って寝よう?」
「そうだね・・・・。上掛けありがと・・・。」
「ん・・・・。」
オレの身体を運べるはずもない彼女は、目を覚ますまで傍にいるつもりだったとオレに言った。台本を片手に背中でオレを支えていてくれたようだった。
ベッドの上で寄り添った彼女は、「蓮がうたたねするとね、寝ぼけたとき面白いから好きなの。」そう言って、くすくす笑った。
「寝ぼけたとき?何か言ってる・・・・?」
「んー・・・ふふ、無意識に私を抱き寄せたり、撫で回したり。私本当に蓮の抱き枕?」
「そうかもしれない・・・抱き心地が良くて柔らかくて・・・・すき。」
「くすくす・・・・。」
再び柔らかくて優しい香りのする彼女を抱き寄せて、眠りについた。
「・・・・れん・・・れん、ねぇ・・・れん・・・・」
名前を連呼されて、ふっと意識が戻った。
相変わらず彼女を腕の中に抱え、オレは彼女の身体を撫で回していたようだった。
「くすぐったい・・・・。」
「・・・君と台本覚えている夢、見てた。・・・ん・・・?」
いつものように抱き寄せると、彼女からは違う香り・・・。
「なあに?」
「ん・・・・なんかキョーコちゃん、いつもと香りが違う・・・。香水変えたの?」
「さっきお風呂上りにね、ベビーパウダーはたいたの。いい匂いでしょ・・・?懐かしくてね、つい買っちゃったの。」
「あぁ・・・そっか・・・・。」
懐かしい匂い・・・・優しい匂い。
遠い記憶の中で、真っ白な粉をはたいてもらった記憶がある。
幸せなときの、優しい香りの記憶。
彼女を腕に抱いて眠ると、幸せな温かさが降ってくる。
「君を抱いて寝るの・・・・やっぱりすき・・・・。」
ベビーパウダーの香りと共に彼女を再び抱きしめて、深い眠りに付いた。
いつでも君の肌とほのかな香りが、柔らかくオレを包む。
今夜も一晩中、優しい香りと共に・・・。
2006.2.24