(Happy Birthday 2019(Ver.Ren))
『・・・二十三歳の会社員の女性が・・・により・・・この事件で・・・・・・・・・と、供述したとの事です』
蓮の部屋のリビングで、蓮とキョーコはソファの上でただぼんやりくつろいでいて、テレビのニュースを見ていたキョーコは、
「なんか、こういうニュースを見るたびに悲しくなる・・・」
と、蓮に言った。
「だって、せっかく二十三年もがんばって生きたのに・・・こんな無残な最期、悲しいって・・・」
蓮はニュースを見ながらぼんやりと話す隣のキョーコの言葉を黙って聞いていた。
「今犯人の側にだってなってるけど・・・なんかいろんな気持ちがしちゃう・・・。人だからって思う時もあるし・・・・。すごく普通に生きていても、誰にでも、犯人側にも被害者側にもなる可能性があるなあとか・・・」
キョーコは意味があるような無いような言葉を、あまり考えるでもなく並べて、ぼんやりと言った。殆ど独り言だった。
蓮はまだ黙っていた。ニュースを続けているテレビを見ながらキョーコの言い分を聞いている。テレビ画面では犯人の顔や、生い立ち、近所の人のインタビューなどが流れている。
「最期に見る顔が、こんなに怖い顔をした人なのかと思うと・・・。せめて私が死ぬときは蓮を見て死ぬのがいいなあ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
何も返事をしない蓮にようやく気付いたキョーコは、蓮を見て、
「あ、ごめん・・・何か一人で話して嫌だった?意味はないから気にしないで・・・私はそう思うだけで」
と、続けた。
「それってキョーコちゃんのプロポーズ?」
「え?なんで?」
「死ぬときはオレを見て死ぬのがいいって言った」
「いや、あの、だって明日死ぬかもしれないもの。最期に見るならって・・・」
何も考えずに漏らした言葉だったから、慌てて、言い訳をするかのように続けた。
プロポーズなんていう気持ちなど微塵もないが、今思う分には、最期に見る顔は蓮がいい。
でも慌てて否定したから、蓮は顔を曇らせた。
「え~・・・なんだ残念。オレが置いて行かれて残る前提?キョーコちゃんに置いて行かれるの、ヤダな。置いていかれたらオレ多分、記憶をなくすほど憔悴しきってすぐにそっちに会いに行っちゃうと思う。しかもこれからすぐとか多分オレの髪はすぐに白色になると思うね」
蓮は、そうなった場面を想像していやだと思ったのか、左右に首を振った。
「私もそうだと思う、よ?」
「やっぱりオレもキョーコちゃんに手を握ってもらって死ぬのがいいな。そんな死に方が出来たら多分それは絵に描いたような幸せな人生っていうやつ」
蓮はキョーコの手を取り、にっこり、と笑ってそう言った。
え、お言葉を返すようですが、それは、プロポーズですか、と、キョーコは思ってどきり、とした。
ニュース番組が終わり、番組が切り替わる。
その音で、ちらり、と、キョーコは時計を見た。
「あ、十二時になった。お誕生日おめでとう。今年も一番に言えてよかった」
「ありがとう、キョーコちゃん」
蓮はとてもうれしそうに笑った。
だからキョーコも嬉しそうに笑った。
蓮はむくり、と、体を起こして、腕と体をのばし、テレビのリモコンを取って電源を切った。体がソファまで戻るとすぐにキョーコの頬に手で触れて、頬に軽く唇を置く。
耳に軽く。
うなじに。キョーコは笑いながら首をすくめた。
蓮は、恋人の、遊びのキスを続ける。
キョーコがただただ、それをくすぐったがって笑って受け止めていて、かわいくて、それはとてもいい時間だと思ったのに。
十二時を過ぎて、蓮の携帯電話は、次から次へと止まることなく短い振動を続けている。
恐らく、おめでとう、の、お祝いのメッセージが方々から届いているのだろう。
キョーコは、あちこちに軽く落としていた蓮の唇を避けて、その携帯電話の短い振動音が散々鳴る様子を見つめた。
「・・・すごい量・・・さすがだわ・・・。十二時すぎて五分以内にこれだけ鳴りっぱなしって。どれだけの人が本気で蓮の事想っているの・・・。人気があるのは嬉しいけど、でも、もし見て全部女の人だったら勝手に私がアドレス変えたいくらい」
はぁ、と、言いながら、キョーコが随分と興ざめしたかのように冷めたい目をして携帯電話を見た。
「そう、それがいい」
蓮はにっこり、と、笑った。
「前々から、何が欲しいって聞かれていて・・・何がいいか分からなかったんだけど。新しい携帯電話、欲しいな。一つしか連絡先が入ってないやつがいい。今年のプレゼント、それがいいかな。時計タイプのでもいいかも。自分で買うから、一緒に選ぼう?選んでくれたヤツ買う。完全なプライベート用。そうすれば君の連絡を見逃すこともないし、プライベート時間は、仕事用の方は全て電源を切っておけばいい。そうすれば、プライベートが他人に邪魔されることは無くなる」
蓮は、実に名案だ、というような顔をしている。
蓮の誕生日なのに。目の前に祝われる本人はいるのに。蓮の誕生日に第一声でお祝いしたのに。たくさんのありがとうのキスの雨をもらったのに。
そんな嬉しい最中に携帯電話の震える音で同時に沢山の女の子の姿を思い浮かべてしまい、すこし拗ねてしまった気持ちがした。
キョーコの中でひねてしまった機嫌が、中々元に戻らない。
「自分で買ったらプレゼントにならないじゃない・・・」
「じゃあ物は選べないから、何か、ひとつだけ、誕生日のリクエスト聞いてくれない?」
「わかった・・・・」
キョーコはしぶしぶ蓮の提案を受け入れる。
「私のためだけの、は、すごく嬉しい・・・でもね、社さんと社長さんとか、本当に大事な人は緊急な連絡があるかもしれないから、念のため、入れてね」
「分かった。いいの?」
「もちろんいいわよ?だって、分かってくれている人たちだから」
当然のようにキョーコは言った。
必要な連絡はそんな個人的な嫉妬心とは別物だ。
「ありがとう」
蓮はキョーコの頬にもう一度唇を置いた。
また同じように、遊びのキスを、ありがとうのキスを、繰り返そうとするから、キョーコは、ちょっと待って、と言って、唇を止めた。
「私は、その。ほかの、女の人たちが、何って蓮とは関係ない事も知っているのに、でもすごく苦しい時もあるの。蓮がちょっと優しくした人たちみんな、すぐに蓮の事を好きになってしまうんだもの。本当は優しくなんてしてほしくないし、触ってほしくないし、連絡先やアドレスなんて聞いてほしくない。明らかに蓮の前で女子力も気持ちも三倍になる人がいっぱいいるんだもの。仕事がうまくいくのはもちろん嬉しいけど・・・」
ふぅん、と、キョーコは仕方ない事を諦めるかのような、小さな息を吐きだした。そもそも自分の手に余るような気がする人なのだから、当然の事なのかもしれないけれど、と。付き合いだしてから、そんな場面を見る事は日常茶飯事だとはいえ、たまに、女性らしい姿で媚びを売る様子を見るのは、すごく嫌だと感じる事がある。
そんなキョーコの拗ねた気持ちなどどこ吹く風、蓮は、にこにこにこにこ、と、嬉しそうな顔をしてそれを聞いていた。
「なに?何か・・・あの」
と、蓮の満面の笑みを見て、キョーコは何かを感じて、若干顔の表情が引きつった。
「え?キョーコちゃんがすごくヤキモチ妬いてくれているのを聞くのって、なんかすごく嬉しいなって。あんまりオレの事で、そういう事聞かないから。オレってすごく愛されているなって思って」
煮え切らない複雑な気持ちをあっさりヤキモチと一言で整理されたうえ、何か愛されているからだとポジティブな言葉に置き換えられると、とても恥ずかしい。
「・・・もうホントやめて、そういうのを笑顔で言うの・・・」
嫉妬心を表に出すのだって、こそばゆいし、言いたくないし、大人みたいに、受け流してしまいたい。なのに、思わず言葉が漏れてしまったら、蓮が喜ぶなんて。
真っ赤になったのと、恥ずかしいのを隠すため、キョーコは体を折って蓮の太ももの上に額を置いて顔を隠した。
「・・・もうホント困る・・・」
「そう?」
蓮は置かれた手を握り、反対の手はキョーコの髪を混ぜて、指で髪と後頭部を撫でて髪をすいた。
「リクエスト。今日はオレの誕生日だからオレの好きにさせてくれない?」
「・・・・・・・」
「返事が無いっていうのは、無言の肯定って事でいいのかな、キョーコちゃん?」
絶対、すごくやる気で意地悪そうか、有無を言わせない満面の笑みでにっこり、と、笑っている、と、キョーコは思う。顔を上げずに、まだ、キョーコの額は蓮のももの上。
「イエスと言ってもノーと言っても、いつだって好きにするのに」
「それはひどい。そんな事ない。オレはすごく君のこと考えてる」
髪を混ぜていた蓮の指は、キョーコの髪の一束を持ち上げて、ねえねえ、と、軽く引っ張って、聞いている?分かっている?と、主張した。
力説されても同意を求められても分からないものは分からない。
ただ、普段は限りなく優しいのは、知っている。
時々、何かに嫉妬をすると、限りなく優しくないのも、知っている。
蓮も嫉妬する。それは、散々キョーコに伝えられる。
自分でも自覚があるのか、限りなく優しくない日の後は、いつもの倍優しく、そして、それを償うようにキョーコに謝罪する。どうやっても、キョーコが他の男と何かあった日は、それが我慢出来ない、と言う。返答に困ると、オレは嫌い?と、聞いた。
でもそんな優しくない蓮の中に、本当の本音が隠れているから好きだし、そういう形で蓮の中の激しさを通してキョーコ自身への気持ちを垣間見る事が出来るのを嬉しく思ってしまうのは、好きになってしまったがための弱みなのだろうか・・・・。そしてもちろん、優しい蓮の甘さの中に溶けてしまいたい日だってある。
どんな姿かたちだろうと蓮がどんな気持ちであろうと、蓮は蓮だ。
いつ、飽きられ、もっと魅力的な女性が現れ、自らの恋の終わりが来るのかも、分からない。
自分が、どんなに愛したとしても、相手が同じ熱量を持っているかどうかは別の話だ。
だから、毎日が、その日限りの、一日限りの、恋だと思っている。
いつもキョーコはただただ全力で蓮のそばにいる。
油断をしたら、すぐに誰かに取られてしまいそう。
全てが崩れてしまいそう。
蓮が聞いたら笑われてしまいそうな危機感しかない。
蓮はそうして嫉妬をしてはキョーコの気持ちを散々と問い、全てを暴くというのに。
キョーコが沢山のそうした山のように届くメールや女の子たちに、たまには少し位嫉妬したっていいじゃない、と、思う。蓮は少しでもキョーコの事で嫉妬などしたら、即自分の腕の中で、キョーコの体も気持ちも散々と弄ぶというのに。なんてずるい、と、思う。
それを、愛されていると、喜ばれ、一言で片づけられるこちらの身にもなってほしい。
どんなに、やきもきしているのか、すこしは知ったらいいのにと思う。
でも、怒って、責める事ができたらどんなにいいだろう。
それだってショータローとの間でもあったことだ。
嫉妬の心、触ってほしくない心、全て、見て見ないフリ・・・
未だに、それはとても難しい。
愛してしまったが故の弱みだと思う。
誕生日位、たまには、素直に、伝えてみようか・・・・。
「・・・・・・ねえ」
「ん?」
「すごくバカな質問していい?嫌いって言わないで聞いてくれる?」
「うん」
「・・・・本当に、私といて、楽しいの?もっとほかに、本当は、好きな人、いないの?私がこんなに、好きだって言うから、仕方なく付き合ってくれているんじゃなくて?いつか、仕事に集中したいし重たいから無理って言わない?」
「本当にバカな質問だ・・・本当にバカだね」
「そうでしょ?恋人に聞くさっきみたいな台詞があってね。でも聞いてみたくなる気持ちも分かるの。心配で、怖くて、いつか捨てられる日が来る事ばっかり心配しているこっちの身にもなってほしい、ってその後訴えるんだけど・・・。でもその台詞を言って、その時は否定してくれる相手が、二週間後には浮気をしている現場を私は見てしまうの。やっぱり現実になった、って、思うんだけど。だから恋はいつでも断崖絶壁なんだって思って・・・・いつでも絶望の谷底に落ちる気持ちの準備しておこうって・・・・」
「仕事だろう?本当に君は・・・。どうしてオレが君を捨てる日が来るの」
「・・・これ以外にもドラマや映画でも散々やったし見たもの。いろんなケースがあるし。私、未だに全然慣れないし・・・他の人と恋愛なんてした事ないから上手くできているかどうかも分からないもの・・・。あなたは沢山の人を知っているから私なんて比べられたら吹き飛びそうな程かも」
ごく冷めた声で言うキョーコに、蓮は、笑った。 誰かと比べる事になんて全く意味なんて無いし、今までの誰かの存在なんて、それこそ、風のように飛んで行ってしまう程深く愛し合っているというのに・・・。それでもキョーコの言うたくさんの怖さは、蓮も十分理解している。今はもう、自分以上にキョーコの事を知る人物が現れるなんて無いと思う。
「・・・その答えはあとであっちで聞かせてあげる。ていうかさ、オレが他の人のものになっても、キョーコちゃんはいいと思うの?」
「いや。すごくいや!!あなたの事を私以上に分かる人がいるなんて思えない」
オレだってそう思うのに、君だってそう思っているのじゃないか、と、蓮は思う。
「そう思うのにどうしてオレが君を捨てるなんて思うのかな・・・本当に」
「私の気持ちなんて。どんなに思っていたってすれ違う時はすれ違うもの」
「・・・・キョーコちゃん。ひとつだけ、聞きたい事がある。オレは私のものっていつ嬉しそうに誰かに言ってくれるの?およめさんになるのって、自慢してた。いつ言ってくれるの?」
「え?あの?」
「アイツにはいつも言ってたのに。オレには言ってくれない。なんで?」
「・・・いやだそんな。そんな事に嫉妬してたの?うざくない?嫌じゃない?バカ女でしょ?言ったらもうバカにしてどこかへ行ってしまうくらいの、ミラクルおバカ発言よ?」
キョーコは顔を上げて、心底うろたえて言った。
なんで今ここにショータローが出てくるの、と、キョーコは思う。
未だに、蓮は、ショータローに何か嫉妬のようなものを感じているのだろうか?
「・・・アイツには言えてオレには言えないんだね・・・」
蓮の声が少し詰まったのを聞いて、キョーコが困った顔をして、蓮の顔を心配そうにのぞき込む。傷つけるつもりもないし、言えない訳ではなく、そんな子供時代の幼い台詞を蓮が本当に聞きたいの?と、思っただけだ。
「ちがう、ちがうの。勘違いしないで。本当に聞きたいなら言う、けど・・・」
蓮は自分のもの、と、何の疑いもなく、自分のものと主張をする事は、何かどこかしづらい。しかも、およめさんになるの、なんて、こちらが決める事ではないと、散々ショータローから学んだのだから。
「・・・やっぱり、キョーコちゃんは優しいね」
蓮は、にっこり、と、笑みを浮かべている。
キョーコは、気が抜けてまた顔を足にうずめた。
でもキョーコは蓮の手を握った。
「・・・じゃあ誕生日のリクエストは、これからオレが眠るまでずっと、愛してるって言い続けてくれない?これ断られたら、オレすごく傷つくかも・・・立ち直れない位」
「・・・わかった。あと、私のために言いたくても我慢していることがあるなら・・・全部きちんと聞くから・・・・」
蓮が静かに、くすり、と、笑って、言った。
「やっぱりいつでも優しいよね、キョーコちゃんは。オレがお願いしたら聞いてくれない事ないもん。誕生日のおねだり聞いてくれてありがとう」
蓮はキョーコの体を起こした。
自分の体の上に乗せて、腕の中に入れる。
長い間キョーコが顔を伏せていたから額が少し赤くて、蓮は笑った。
キョーコは、蓮に、「おたんじょうび、おめでとう」と、言って、唇に一つ、キスを贈った。
お返しにキョーコに降ってきた口づけは、今度は濃厚で、甘くて、すぐに、キョーコの意志など溶けるように無くなった。
蓮の指は、服の間からキョーコの背中に忍び込み、ゆっくりと背中を撫でるからキョーコは甘い声を漏らしながら背を仰け反らせて、体はさらに密着した。
キョーコが体を支えるために蓮の首に両腕を回した。
溶けてそれは甘く色づいたキョーコの顔が、目の前に、ある。
蓮は、にこり、と、笑って、唇を離した。
「かわいい」
「・・・・・・」
「その顔がいつも最高に好き」
「・・・どの顔かわかんないもん・・・」
「その顔、だよ。オレが好きで仕方ないっていう顔。ホント、意地っ張りで無自覚で天然すぎだろう・・・。分かってる?君はその顔をするだけで、一瞬にしてオレの理性を飛ばすんだ」
そんな事分からない!というような顔をして怒るキョーコに、蓮は、面白そうに笑って、またキョーコの唇を探して、ゆっくりと、口づけていった。
いつか蓮の唇と指だけで、キョーコはくたり、と力が抜けて、蓮の体に、もたれかかった。
こんなだから、いつも、どんなに蓮が自分の事を考えてくれているのかなど分かるすべなど無い。
蓮は、面倒そうに、自分の首元のシャツのボタンをはずした。
それと共に、蓮の中で何かのスイッチが入ったように、キョーコは感じた。
蓮はテーブルの上にあった携帯電話の電源を落として、鳴り続けていた振動を止めた。
「もうさすがに社さんからこの後緊急の連絡が入る事はないだろ。もしどうしてもオレを捕まえたければきっと君に電話がくるだろうし。着信の音が聞こえるかは別だけどね」
蓮はにっこり、と、笑って、キョーコを見た。
本当に大事な連絡だったらどうするの、と、心の遠くが思いながら、 すっかり蓮の腕の中で溶けてしまったキョーコは、ただ蓮を見つめた。
「お誕生日おめでとう・・・好きって言えばいい?愛してるって言えばいい?」
「どっちも。言い続けていて」
蓮は、ふ、と、不敵に笑った。
「行こう」
蓮に手を引かれて、部屋から二人の主人たちはいなくなった。
置いて行かれた二人の携帯電話は、そのあと、ひとつも、鳴らなかった。
愛していると、二人の唇から、幾度となく互いに伝え続けた。
互いを求め合う言葉に、二人の理性など全て溶けて消え、その愛しているという言葉さえも、最後には、消えてなくなった。
時間などなく、音さえなく。
二人の激しい恋の邪魔をするものは一切なかった。
死が二人を分かつまでそばにいて、そう言ったのは、誰だったのか。
同じように繰り返したのは誰だったのか。
それが一生分の誕生日プレゼントでいいと言ったのは誰で、うんと言ったのは誰か。
お誕生日おめでとう、愛してる、大好き・・・・
そばにいて・・・・ずっと手を握っていて・・・
誰かに止まらない愛を告げていたのは誰だったのか。
いなくならないで、と、誰かが言った。
いつも二人の最もそばにいる携帯電話は、電源を切られ、一切何も話を聞いていない。
だから、誰にも分らなかった。
2019.2.10
Happy Birthday Ren!おたんじょうびおめでとう!