紅い陽炎





「最上さん、もう夏も終わるね」


テレビ局の屋上では、撮影スタッフが集まって 近くで打ち上げられている花火を眺めている。

「そうですね」

「綺麗だね」

「そうですね」

そっけない会話は、まるで花火が散り往くように短かった。


沢山のスタッフが夏の風物詩を前で、酒を片手に宴会をしている。


その様子をキョーコは壁に寄りかかり、蓮と共に眺めていた。


一瞬だけ花火が止み、 漆黒の空が濃厚な闇と、 一瞬の静寂に包まれた瞬間包まれたキョーコの手。その手も、一瞬だけ強く握られて、離れた。

周りに人がいるにも拘らず触れた蓮の大胆な手に驚いて、キョーコは身を強張らせた。


「・・・夏が終わりますね、敦賀さん・・・」

「そうだね・・・・」




キョーコの頬に、今年の夏の最後を締めくくる一瞬の緋花が散っていった。



2007.09.19