おまけ
ある日の夕方、キョーコは工藤仁の部屋に居た。もう殆んど用事は無かったけれども、その後の話を聞きたいと言われて、久しぶりに遊びに来ていた。
「なるほど、じゃあオレの作品は結果的に作って良かったって訳だね」
工藤仁は嬉しそうにそう言った。
「先生、内緒ですよ?」
「大丈夫だって。ね?本当の事を言ってみるべきだっただろう?」
工藤仁は笑って目の前の自分の本を手に取った。
「君に愛が欠如しているって訳じゃ無い事は分かっていたけど、よかったね」
えへへ、と笑って、キョーコは少し恥ずかしそうに、笑った。
「今、実はすごく幸せだろう?幸せオーラが出てる。愛されてるね」
「・・・はい・・・」
「愛されたいと願うことって、結局は、自分が一人で弱いものだと強く自覚しなければならないから、強くなれなければ、人に愛されたいと願えなかったりしてね。弱い自分を受け入れられた人を見ると、少しだけ、ほっとする」
「・・・なんだかすごく弱くて、甘えすぎてる気もしますけど」
「男は頼られたい生き物なんだからいいんじゃないの?もっと彼を利用しても。利用されてるなんてきっと微塵も思わずに、大事にしてくれると思うよ」
「ふふ・・・」
キョーコは笑いながら目の前のいつもと変わらない紅茶を口にして、美味しいですね、と言った。
「先生、またお仕事があれば呼んでくださいね」
「そうだね・・・できればお願いしたい所だけど、気持ちだけ貰っておくよ。事務所ででもまた話をしよう。きっと今、彼はオレと二人きりの君にやきもきしてるはずだから、もう男と二人きりで会うとか、深く恋愛の相談をするとか、ましてやこうして男の家に一人で来るとかは、タブーかもしれないね」
工藤仁は口に紅茶を含んで、穏やかに笑った。
【FIN】
2010.08.15
また今回も長い間読んで下さって、また、長いものを読んで下さってどうもありがとうございました!ラブの足しになったなら何よりです。本の方のあとがきにも少し書いたのですが、カタマリさん・・・自分の中では誰だったのか、一体どんな意味があったのか最初から決まっていましたが、作者都合にてあえて書きませんでした。ご想像におまかせいたします。